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ラ・ラ・ランドは挫折者にはキッツい映画でした(ネタバレあり)

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巷で話題のラ・ラ・ランドを観てきました。

ミュージカル映画って、私の中では基本的にハッピーエンドというか、前向きというか、成功に向かって(挫折もありつつ)まっしぐらな印象なんですが。

これはミュージカルで、確かにハッピーエンドではあるんですが。

これはよし頑張ろ!元気出た!っていうよりかは、始終もんやりとした気持ちにさせてくれる映画でした。

 

タイトルのラ・ラ・ランド、というのはLALALAND、つまりロサンゼルスを表しているそうで。スターを目指している若者たちが成功を夢見て奮闘している街、ハリウッド。一握りの成功者と数多くの挫折者。野心と怨嗟が渦巻いている街でもあるんだろうなあーと勝手に思ってしまいます。なんでだろう!私も夢見て挫折して、まあちょっと別の形で細々と暮らしている身だからでしょうか。 

以下ネタバレなので折りたたみです。

 

主人公は数多くのオーディションを受けても1次審査にも通らないダイコン役者(ごめん…)仕事もあまり身が入らず、かといって社交もあまり上手いとはいえない。何故に女優を目指そうと?というパッとしない(ごめん…)女性です。

 

エマ・ストーンはもちろん可愛い!です。というか、この「ダイコン」ぷりをあえて演じているエマ・ストーンの演技がスゴイ。笑っているようで笑っていない、笑顔で無理しているという表情がナマナマしすぎて。場違いなパーティーや食事会に出ちゃって、何も言えずに相槌と笑顔だけ浮かべる、あの感じの表情がリアル!(あとお尻がぷりっとしていて可愛いですね~ジーンスが似合う。)

 

まあそんな、どう考えても成功者になるのは難しそうな主人公が運命的に出会ったのが、実力はあるがコダワリが強すぎて雇い主から煙たがられているジャズピアノ奏者。お互い喧嘩腰で知り合った二人ですが、主人公が運命的な出会いにピーンとキテぐいぐい押した結果、いい感じに付き合うことになります。

夢とかどうでもいいのかよ!というくらいお花畑デートを繰り返し、キャッキャウフフ、すわ結婚か?という状況の中、主人公が親に連絡。「彼ー?自分のお店出したいんだって。お金?多分あるんじゃないかな~?多分貯金してるよ」

男に金は勿論無い。「これじゃあ甲斐性なしだ…」というわけで男は、自身の店を持つ前にお金を貯めよう!と、とあるジャズバンドに入ります。

 

男は、古典的なジャズにあくまでこだわりを持っているが、現代では中々世間には受け入れられない。ウケてもお年寄りが大半。対してそのジャズバンドは、若者にもジャズを知ってもらうことが前提。新しい手法をドンドン取り入れる。聞いてもらってなんぼ。これも一つのジャズの形だと。

 

これはこれで正しいですよね。男にとってはジャズではないかもしれないが、万人が望んでいるジャズの形でもある。やりたいこととはズレているかもしれないが、広義ではジャズである。売れない音楽よりも、まずは売れる音楽をする。

男は納得行かないながらも、主人公との生活のためにそのジャズバンドに加入します。実力はあるので勿論順風満帆。そのバンドは売れに売れます。

 

つまり主人公とのお付き合いがどんどん少なくなる…。主人公のオーディションはうまく行っているとは言い難い。現在は自主制作脚本を自分で演じ、自費で公演するという、それフラグじゃん…という準備の真っ最中。

お互い忙しい中で、まあ待っているのは喧嘩ですね。

 

主人公は男が、当分バンド活動で家を空けることを案じる。あなたのやっていることは本当にやりたいことなの?夢を捨てるのかと。対する男は君のためにやっていることだと返す。ついでに人に気に入られる女優のおめーがんなこと言えた義理じゃないだろ、という失言もかます。

空気感最悪の中で迎える一人芝居。勿論お客は知り合い含めた超少数。しかもお客は「あの人超ダイコンね」とヒソヒソ噂。ついでに男は仕事で来れない。打ちひしがれた主人公は夢破れて故郷に帰ります。ヤッパリね~。

 

ここまで書いてて思ったんですが、これミュージカルだから持ってるけど、普通の映画だったら脚本が優れているとは言えないです。さらに続く内容も結構なご都合主義。

 

男の電話に、とある事務所から電話が掛かってくる。主人公の演技を見たエライ人が、彼女の演技を見て絶賛。是非映画に出演させたいと。これを聞いて遠路はるばる主人公の元へ行く男。なんとか説得してハリウッドに連れ戻します。オーディションの結果は分からないが、もしも受かったら、当分二人は会えない。どうする?という主人公に、男は「チャンスは逃すべきではない。自分はここでやっていくから、君も頑張れ」と。

 

そんなこんなで5年後。

 

主人公は押しも押されぬ大スターになりました。ついでにいつの間にか結婚して子供も居ました。たまたま、夜のコンサート(か何か)に夫婦で向かうが、あまりの渋滞にその日は諦め。ディナーをした帰りにとあるジャズクラブに入ります。

 

なんとそこには!かつての彼氏が自分の店を開いておりました!古典的なジャズで。しかも彼女が考えた店の看板名で。男の奏でるピアノを聞きながら、主人公はかつての出会いや、もしも喧嘩もなく全てがうまく行っていれば、今夫になっているのはかつての彼氏かもしれない…と思いを巡らせます。(この回想がいかにもハリボテ舞台で夢でーす!という感じが印象的でした。えぐい)

現実に戻った主人公は、声もなく男と顔を合わせ…お互い微笑み合い、やっぱり言葉を交わすことなく別れます。

 

こういう恋もあるよね!でも最終的に成功できたんだから、ハッピーエンドだよね!

 

どこがだ!と私は思いましたが。映画だから成功するけど、こんな唐突な主人公の成功、ご都合主義的で、むしろ薄ら寒い。どっちかというと「成功すると思った?残念!そんなにうまくいくはずはないんだよね!」という制作側の皮肉かもしれない…とまで思ってしまい…。私自身がそう思っているからこそのこの感想ですが。

 

たぶんこれが成功している、だとか自分の夢を叶えた、という人であればまた感想は違うのではないかと思います。主人公は何百回落とされてもオーディションを受け続け、自主製作舞台を1人で行い、そして長い長い努力を経てようやく自分を認めてくれる人に巡り合う。十分、努力の末の成功です。納得できる。

努力している方にとっては、とても美しい恋愛映画なんじゃないかなと思います。

こういうのを楽しいと思えるような人間になりたかったです。

 

ちなみに終盤すすり泣いている声もチラホラ聞こえたので、たぶんこういう一瞬の美しい恋愛をしている方もすごく感動するのだと思われます。

移入する方向によって評価の変わる内容だなという印象です。私は「夢」敗れたナアナアの人生を送る人間なので、若干身につまされ痛々しい内容だ…と思ってしまいました。面白かったですが!

 

音楽も勿論素敵だし、ダンスも可愛い。あと、現代のガジェットを使っているのに、画面や音楽、全体的な色彩が60~80年代風?これはいつの時代なんだ?と思えるレトロさで、見ていて感覚を狂わせる感じも面白かったです。

半分ミュージカル、半分恋愛&サクセスストーリー。若干陳腐。という印象を受けました。ちなみにジャズに関しての知識はほぼ無いのでなんとも言えないです。古典的とか、新しい手法とか。

私は売れるものを作るのがエンターテイナーだと思っているので、主人公の本当の夢云々はあー昔はそう思ってた~という感覚です。遠い昔…。

ミョーに生々しいのでそういうところも自分と対比してしまうのですよね。そういえば主人公が別の男と結婚して子供をもうけているのも、あ~~~~~~分かる!!!ですよね!そういう選択肢を選ぶよね!うん!と納得してしまいました。

 

落とし所が分からない不思議な映画でした…。

ちなみにJ・Kシモンズが出てくると問答無用で手に汗握りました。